多種デザインデータのまとめ方

販促物のデザインデータ作成や発注業務に携わる業務担当の方のお話を聞くと、デザインデータの種類が多すぎて特定のデータが見つからないという課題を伺います。データをかんたんに見つけるためにはきちんと整理整頓することが重要になります。整理整頓に必要なとりまとめの基本的な考え方と、具体的な解決方法をご紹介します。

増え続けるデザインデータのとりまとめ

昨今では顧客が商品・サービスを認知する場面は増えています。自宅でチラシを手にしたり、スマートフォンやインターネットで検索したり、実際に店頭で商品に触れたりと多岐にわたります。そのためそれぞれの場面に合わせて販促物が必要になり、商品の数よりも販促物・デザインデータは多くなる傾向にあります。

多くのデザイン担当者は、マーケティング担当者に過去に制作したデータを共有したり、販促物を制作する部門へ素材データを提供したりすることがあります。この時、特定のデータがすぐに見つからない環境では、主要業務に支障をきたすことがあります。業務を妨げることなく生産性の高い仕事をするには、データの検索適正を高めることが重要になります。

まずは検索性を高めるために効果的な基本的な考え方について触れていきます。

ロジカル・シンキング

ロジカル・シンキングとは、問題点を洗い出し解決策を見出すための基本的な考え方のひとつです。正しく使いこなすには、「ピラミッド・ストラクチャー」と「MECE(ミーシー)」という2つのポイントをおさえる必要があります。

ピラミッド・ストラクチャー

1つめのポイントは、「ピラミッド型の構造をつくる」ことです。ピラミッド・ストラクチャーは、データ管理ではフォルダの整理に役立ちます。具体的には複数の関連するデータをすべて1つのフォルダに保存するのではなく、何段階かに分けてピラミッド型の構造でフォルダを並べます。大きな要素の項目から複数の小さな要素に分解することによって、第三者でも構造を認識しやすく、データを探したいときに見つけやすくなります。

MECE

2つめのポイントはMECE(ミーシー)です。MECEはものごとを分解して考えるときに重要な考え方になります。英語のMutually Exclusive Collectively Exhaustiveの頭文字を取ったもので、「モレなくダブりなく」という意味です。

この2つのポイントがロジカル・シンキングの基本となり、検索適正の高い整理整頓を実現する考え方になります。

多店舗業態のケース

多店舗を経営する業態でロジカル・シンキングを使ったフォルダ管理のシミュレーションをしてみましょう。多店舗業態では販促物の種類が多く、店舗毎に内容が異なることもあり、店舗数が多ければ多いほど膨大な数のデータを管理しなければなりません。まずはうまくピラミッド構造に分解したいのですが、重要になる最初の切り口を間違ってしまうとMECEをつくることが困難になります。

例えばMECEを気にせず、あるキャンペーン実施のタイミングで店舗フォルダ作成を行うと、たまたまそのキャンペーンに参画しない店舗や出店準備中の店舗が漏れてしまう可能性があり、次回のキャンペーンで制作漏れの原因になります。

また関東エリアと各店舗という異なる粒度のフォルダを横並びにしてしまうと、同じデータをそれぞれのフォルダに保存してしまい、ダブってしまいます。このような場合では、企業の組織図に合わせた粒度で大カテゴリに国内営業本部、中カテゴリにグループエリア、小カテゴリに各店舗、さらに販促物へと分けていくと、モレなくダブりなくピラミッド構造を作ることができるはずです。

とても簡単なことのようですが意外と奥が深く、俯瞰して見てみるとモレやダブりが見つかることがあります。まずは不完全でも紙に書き出して、MECEの構造になっているか確かめ、実際に使ってみてファイルを分類する際に迷うようであれば見直すことをお勧めします。

またデザインデータを管理する上では、別のフォルダに同じデータを保管する必要があり、どうしてもダブってしまうことがあります。その場合は「タグ管理」の導入の検討をおすすめします。タグ管理とは、ファイルに任意の文字を付与することで検索機能を高めるものです。例えば先のキャンペーンデータの管理でファイルに「関東エリア」「神奈川支店」と文字を付与すれば、どちらでも検索することができます。フォルダ分類に依存しない検索性が得られます。

・タグ管理ができるツール:fleekdrive

デザインデータの整理整頓

次にフォルダ内データの整理整頓についてご紹介します。整理整頓活動で有名なフレームワークといえば「5S」です。5Sを実施すると、複数のデータを取り扱うビジネスシーンでも必ず業務効率が向上します。

5Sとは

整理、整頓、清掃、清潔、躾の頭文字を取ったフレームワークで、職場環境をよりよく維持・改善していくための活動です。注力して取り組む企業には、世界的にもトップクラスである日本の自動車メーカー「トヨタ自動車株式会社」が有名です。トヨタでは“5Sは仕事そのもの”といわれ、一説では5Sを徹底して取り入れたからこそ成功した、ともいわれています。前章でご紹介したロジカル・シンキングに加え、5Sを実施するとデータ管理の場面でも様々なムダがなくなり効率良く業務できるようになります。まずは5つのSについて、かんたんにご説明します。

①整理:必要なものと不要なものを分け、不要なものを捨てる
②整頓:必要なものがすぐに取り出せるように、置き場所、置き方を決める
③清掃 ④清潔 ⑤躾:きれいにする習慣をつける

デスクトップやフォルダ内のデータが散在している、古くて不要なデータが捨てられていない、必要なデータをすぐに見つけることができない…このような環境であれば、5S活動をすぐにでも実施すべきです。

整理整頓ができていない環境で起こる3M(ダラリ)

整理整頓ができていない環境では、3M(ダラリ)が発生している可能性が高いです。3M(ダラリ)とは「ムダ、ムラ、ムリ」のことで、デザインデータ管理ではデータを探す時間のムダ、属人化された保存ルールによる管理体制のムラ、膨大なデータを整理しないまま従業員には場所と種類を覚えさせるなどのムリが当てはまります。

特にデータを探す時間のムダがある場合、たくさんのデメリットがあります。先にもお伝えした例で、企業のデザイン担当者にマーケティング担当者から過去に制作したデータを共有してほしいと要望があった場合、デザイン担当にとってデータを探す時間そのものがムダですし、マーケティング担当はデータが共有されるまで作業が滞ってしまうこともあります。チームの生産性を高めるためにも整理整頓は重要であるといえます。

整理整頓方法

データ管理の5S活動や3M(ダラリ)をなくすために、具体的な整理整頓の手段をご紹介します。

整理

必要なデータと不要なデータを分け、不要なものを捨てましょう。何カ月~何年間と使用しないものが対象とルールを決めて、条件にあてはまるデータは破棄するなどの運用をおすすめします。また破棄すべきか判断に迷うデータがあれば、一時保管用のフォルダを作成して保存すると良いです。

整頓

必要なデータがすぐに取り出せるように、置き場所と置き方を決めましょう。置き場所は適切なフォルダに保存します。保存されたデータは自動的に整列されるのですが、どのような順番で整列されるのかを知らなければ、フォルダの中でデータがバラバラになってしまいます。デフォルトの整列順にはルールがあるため、ルールに沿ったタイトルで整頓を行います。以下の頭文字が優先順となります。

  • 記号
  • 数字(0 → 9)
  • アルファベット(A → Z)
  • ひらがな・カタカナ(あ → ん)
  • 漢字

整頓時にはどのようなタイトル順で並べると作業効率が良いかを意識しましょう。例えば時系列に並べたい場合は頭文字を日付にしたり、作業名の前に作業工程に沿って数字で番号を振る方法があります。

また企業名を並べたい場合はアルファベットを頭文字にすると、前株・後株に関係なくA→Zの順番に整理することができます。

このように置き方をルール化すると、検索性は高まります。タイトル変更するときに、すでに保存されたタイトルを1つ1つ直すのは手間がかかるので、Windowsパソコンではショートカット[F2]キー(Macパソコンではファイルを選択してEnterキー)を使って少しでも作業時間を短縮しましょう。

清掃、清潔、躾

一時的にきれいにするだけではなく、定期的にカレンダーで清掃に取り組む予定を入れ、きれいな状態を保つ習慣をつけましょう。

さいごに

デザインデータの整理整頓ができれば、業務の生産性が向上します。昨今ニーズが高まっているフリーアドレスのオフィスや、テレワークの環境にあっても、データをかんたんに見つけることができ、効率的に業務を行うことができるはずです。

もしも整理整頓だけでは理想とする環境づくりが難しい場合、自社の運用に合ったツールの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

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